本当は発表直後のタイミングとして記事にしたいと考えていたのですが、いろいろ時間がとれなかったので今更感はありますが・・・2023年11月に「バーチャファイター3tb Online」がアーケードで稼働開始しています。
原作は1996年9月に当時最高クラスのグラフィック性能を誇ったSEGA Model3基板(CPUは当時のPowerMacと同じ、PowerPC 603ですが、航空機・宇宙船の開発製造会社として知られるロッキードマーティン社のグラフィックチップ「Real3D」が96年当時としては非常に高い性能を誇っていました)のローンチタイトルとして稼働した「バーチャファイター3」のアップデート版で、その名の通りKOFシリーズと同じ3 on 3のチームバトルに対応したほか、ゲームバランスの調整も行われています(無印版と同じシングルモードもプレイ可能)。
「4」以降の作品では廃止されてしまいましたが、エスケープボタンによる軸移動とアンジュレーション(高低差)によるダメージの増減といった新しい試みを取り入れたのが特徴でした。新キャラは中の人がサワキちゃん、あるいはゴリの故・梁田清之さんが演じる相撲レスラー、鷹嵐と合気道の使い手、梅小路葵(中の人は熊谷ニーナさん)です。葵さんは当時のグラフィックだといまいち微妙な印象だったのですが、「4」以降で本当にべっぴんさんになりましたね・・・
以前も記事にしましたが、無印版「3」は当初セガサターンに移植される予定でしたが、ハードウェアスペックに差がありすぎた上に、当時は既に後継機となるドリームキャストがコードネーム“KATANA”として開発がスタートしていたため、結局実機で動いている画面が一度も公開されないまま開発中止となっています。
96年12月にリリースされたセガ版「KOF」ことファイターズメガミックスにエスケープボタンによる軸移動とVF2キャラに一部必殺技を搭載、「バーチャコップ2」からのゲストキャラ、ジャネットさんが実質葵さんのコンパチキャラとして実装されていたのでかのあゆも当時こちらで練習していました・・・結局VF3とは完全無関係のHORNETをデイトナ愛だけで使いこなそうとしていたのはここだけの話・・・結局バンのコンパチだからそっちかウラバンつかえばry
アップデート版の「3tb」はドリームキャストのローンチタイトルとして1998年11月に発売されたあと、長らく再移植されていませんでしたが、先日発売した「龍が如く8」にアーケード版そのものが収録されています。
元々ドリキャス版も家庭用オリジナル要素はプラクティスモードと初代VFの開発動画、過去作品の動画を纏めたヒストリーモード、後に「シェンムー」としてリリースされることになる「Project Barkley」のティザー映像しか収録されていない上に、国内版は微妙なバグも存在していたため完全移植されるのはこれが初ということになります。
11月に発売した「龍が如く7 外伝 名前を消した男」にもModel 3基板の「ファイティング・バイパーズ2」「デイトナUSA Power Edition(SEGA Racing Classic 2名称で収録)」が収録されていたので、当初アーケードゲームの移植に定評がある(のとまいてつなどでおなじみe-moteを開発したことで知られる)株式会社M2が開発したModel3エミュレーターを採用しているのかと思っていたのですが、今回は自社で新たに開発したModel3エミュレーターで動かしているとのことです。
今回稼働した「バーチャファイター3tb Online」もその自社製エミュレーターを採用しています(そもそも近年のアーケード基板はPCベースのものが多く、OSも組み込み用のWindows Embedded/Windows 10 IoTを採用している場合がほとんどなので移植も楽)。この辺の経緯は4Gamerさんに掲載されている、開発者インタビューが詳しいです。
ちなみに現在セガが採用しているのはWindows 10 IoT Enterpriseを採用しているALL.netで、スペックとしてはCPUがCore i5-6500、GPUがNVIDIA GeForce GTX 1070となるので、実は2024年現在のゲーミングPCと比較するとそこまでスペックは高くありません(ALL.netには世代によって構成が異なりますが、APM3対応のものはSkylake世代のCore i5を搭載する第1世代ALL UXを採用しているようです)。
[インタビュー]「バーチャファイター3tb」がアーケードに帰ってくる。APM3版稼働の背景と「Virtua Fighter esports」のこれから:4Gamer
大ヒットした「2(.1)」やアストロシティミニに収録されたものの、あまり移植に恵まれていない「初代」、あるいは「4」「4 Evolution」ではなく、あえて「3tb」を採用したのは、これらの作品が現在稼働している「バーチャファイター eSports(これも完全新作というわけではなく、「5 Final Tuned」のアップデート版ですが・・・)」にゲームシステムが近いため、差別化するためにアンジュレーションや軸移動を採用した「3tb」をあえて選択したようです。ちなみに「龍が如く7 外伝」にはバーチャ2が収録されています。
エミュレーター動作なので基本的にはModel3版そのものですが、新たにAimeカードに戦績やリングネームを保存することが可能になり、地方にいるプレイヤーとのオンライン対戦も可能になっています。
デイトナUSA30周年記事でも書きましたが、この頃が一番アーケードゲームの輝いていた時期だと思っていますし、Model3から出力されるグラフィックは本当に衝撃を受けたので、令和時代に「3tb」が再びゲームセンターに帰ってきたことはいろいろ感慨深くなってしまいます。
「龍が如く8」はあやあややASUSのろぎい・えらいっ!、3月に発売するMSIのCrawといったゲーミングUMPCでも余裕で動きますし、吸い出すのが面倒(シリアルケーブルかブロードバンドアダプターが必要)ですが、ドリキャス版も今はアンヨヨイヨすまほんで普通に動くようになっているので、稼働当時とは違ってどこでも練習できます。本当、つくづくいい時代になったものです。かのあゆが小学生の頃はどこでもバーチャをプレイ出来るなんて考えられませんでしたから・・・
自社製Model3エミュレーターが出来たのなら「スカッドレース」や「LE MANS 24」の移植も期待したいところですが、この2作品は自動車メーカーとのライセンス関連がややこしいので、いまとなってはいろいろと厳しい現状になってしまっています(ポルシェのEA独占はとうの昔に解決していますが・・・)。そもそも前述の4Gamersさんの開発者インタビューで「Model3コレクションなんて出さないよ!」とはっきり言っちゃってるし・・・
Model3のエミュレーターは非公式だとSuperModelが有名で、現在でも頻繁にバージョンアップされていますが、元々ハードウェアスペックが異様に高いハードだったこともあって、開発自体は「バーチャファイター3」の稼働から7年後の2003年に開始されていますが、初めていくつかのタイトルを起動することが出来るバージョン0.1が一般公開されたのが2011年(この時点ではサウンド関連のエミュレーションが未実装)だったので、当時販売されていたPlaystation 3やXBOX 360でも完全移植は厳しかったのではないでしょうか。今やオンボGPUでも快適に動くようになってしまいましたが・・・
関連リンク
バーチャファイター3tb Online:SEGA
SEGA Model3基盤のエミュレータ「SUPER Model」の一般公開が開始:かのあゆブログ(旧)
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