初期Mac開発に関わり、名アプリ「HyperCard」を生み出したビル・アトキンソン氏が亡くなられていた

本業や体調などの都合で記事化が遅れてしまいましたが、今月初め(6月5日)に初代Macintosh(Macintosh 128K)において描画エンジンの「QuickDraw」やオーザリングソフトの「HyperCard」などを開発されていたビル・アトキンソン氏がスティーブがいる天国に旅立ちました。

残念ながら近年WWDC 2025の基調講演は事前に撮影している関係で間に合いませんでしたが、現林檎CEOのティム・クック氏もXにて哀悼のメッセージをポストされています。

ROMにOSの一部を突っ込むという無茶なことをしていた初代Macintosh 128Kですが、描画APIのQuickDrawは長らくMotorola 68K、IBM PowerPC時代の旧Mac OS(いわゆるClassic Mac)を支えてくれていた技術ですし、プログラミング言語の知識が全くない小さなお子様でも本格的なアプリを作成できる「HyperCard」はその後教育向けに開発されたプログラミング言語「Scratch」にも大きな影響を与えています。

QuickDraw - Wikipedia

実はMac誕生初期の頃はオーザリング機能も利用できるHyperCardのフルバージョンがバンドルされていたのですが、途中からフルバージョンは有料化し、あらかじめ作成済みのスタック(HyperCardで作成したコンテンツ)の再生のみ可能な「Lite」におきかわった…のですが、簡単な隠しコマンドを入力するだけでオーザリング機能もアンロックできたりしてこういうところは今も昔も変わらず林檎らしいなぁとw

最終的にバンドル版は本当にスタックの再生のみに機能制限された「HyperCard Player」に置き換わった後、動画再生ソフトのQuickTimeと統合する形でHyperCard 3.0を開発していたものの、スティーブがCEOに戻った1998年に方向転換した結果、開発中止となったため、実はMac OS X/macOSには対応していないのですが、SheepShaverやBasilisk IIといったClassic Macエミュレーター環境を構築できる方であれば現在でもHyperCard 日本語を二次配布されているサイトがありますし、Internet ArchiveでもWEBベースのエミュレーターを用いて名作スタックを気軽に楽しむことが可能です。

HyperCard Resource Central
Internet Archive: Digital Library of Free & Borrowable Texts, Movies, Music & Wayback Machine

アトキンソン氏自身は1990年に林檎を退社後、「Magic Cap」というOSを開発するためにGeneral Magic社を立ち上げるものの失敗に終わり、そのあとは自然写真家として活躍されたり、人工知能の開発を行うスタートアップ企業の「ヌメンタ」社に在籍しつつ、2010年にはアインホホ向けにポストカードを送ることができる「Bill Atkinson PhotoCard」をリリースしています。

アトキンソン氏が林檎に在籍していた期間は短かったものの、QuickDrawやHyperCardは今のmacOSやiOS、iPad OSにも継承されている「コンピューターはヲタクのものや仕事で使う道具ではなく、誰でも簡単に使えるパートナー」というコンセプトを完成させた功績は大きいですし、偉大なレジェンドがまた1人いなくなってしまったことに寂しさを覚えてしまいました・・・

関連リンク

Wikipedia
ビル・アトキンソン

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